昔々、ある熱帯の国に、大きな川が流れていました。その川には一匹の大きなワニが住んでいました。ワニは毎日、川で魚を獲ったり、水を飲みに来る動物を待ち伏せたりして暮らしていました。
川の近くには小さな村があり、その村には腕の良い肉屋がいました。肉屋は毎日、新鮮な肉を切って村人に販売していました。彼の店からは美味しそうな肉の香りが漂い、それは川のワニの鼻にも届いていました。
「あの肉の匂いは何だろう？あんなに美味しそうな匂いがするものは食べたことがない」
ワニは肉の匂いに誘われて、夜になるのを待ってこっそりと村へ向かいました。肉屋の店の前まで来ると、店の中にはたくさんの肉が並んでいるのが見えました。ワニは涎を垂らしながら、どうやってその肉を手に入れようか考えました。
翌日、ワニは大胆にも昼間に川から出て、肉屋の店まで歩いていきました。村人たちは驚いて逃げ出しましたが、肉屋は勇敢に立ち向かいました。
「お前は私の肉が欲しいのか？でも、私の肉は人間が食べるためのものだ。ワニには合わないだろう」
ワニは言いました。「そんなことはない。私は昨日からあの美味しそうな匂いを嗅いでいる。どうか少し分けてくれ」
肉屋は賢い人でした。彼はワニに言いました。「よし、分けてあげよう。だが、その代わりに君も私に何かをくれないか？川で一番大きな魚を捕まえてきてくれないか？」
ワニはその提案に喜んで承諾し、川に戻って大きな魚を捕まえ、肉屋のところに持ってきました。肉屋は約束通り、ワニに肉を分けてあげました。
それ以来、ワニは時々魚を持ってきては肉と交換するようになりました。村人たちも最初は怖がっていましたが、次第にワニが危害を加えないことを知り、慣れていきました。
ある日、ワニが肉屋に尋ねました。「どうして君は私を怖がらないのか？他の人間はみんな私を見ると逃げ出すのに」
肉屋は笑いながら答えました。「私は君のことを理解しているからだ。君もただ生きるために食べ物を探しているだけだと分かっている。そして、君は約束を守ることを知っている誠実な生き物だ」
ワニはその言葉に感動し、それ以来、肉屋とワニは奇妙ではありますが、互いを尊重する関係を築きました。ワニは肉屋の店を他の動物から守り、肉屋は時折ワニに肉を分け与えるのでした。